叶わなかった願いがある。それは「すずめ」として生きてみること。自由に生きて可愛がられたいのではない。薄い存在感と邪険には思われないその身軽さが良いのだ。病床から震える手を出して窓を開ける。何もいないが確かに声は聞こえるのだ。僕の茶髪は虚しく揺れる。雇われ介護に一日中世話を焼かせた僕の体を少しの黒ずみが彩る。すっかり白くなった顔は女房が愛した丹精をすっかり奪っていった。奇跡がもう一度起こるなら私は「すずめ」になるのだ。
10/2/2024, 11:16:32 AM