こちらで出題されるお題は、どうも一年サイクルで繰り返されているように思う。たまたま、昨年の8月28日も私はこのアプリを利用していた。そして数える程の作品しか書いていなかったので、過去の投稿を遡ることは簡単であった。
一年前に書いた「突然の君の訪問」を読む。
頭の中に、爽やかな記憶の風が吹き抜けた。
私の目は文字を追っているに過ぎない。けれど五感は活発に働きだしている。
あの頃暮らしていた部屋の情景がよみがえる。八畳間を占領する洒落たベッドと40インチのテレビ。正直言って、どちらも買ったことを後悔していた。夏の暑さは依然として厳しいが、窓付きエアコンに助けられている。
私はいまいち効果を実感できないでいる冷感シーツを敷いたマットレスに腹ばいで寝転んでいた。スマホからは下品な歌詞の洋楽が流れ、顎を小さく上下させて、ずれては修正しを繰返しながらリズムに乗っている。
空腹になるとギチギチに詰まった冷蔵庫から添加物まみれの惣菜を引っ張り出して、パックのままレンジでチン。餃子だ。無いに等しい肉汁にはハナから期待せず、ポン酢をびったりと付けてパサついた肉を舌に置く。おいしい。それをスーパーで一番安く売っているペットボトルの緑茶で流し込むまでがワンセット。
満足するとまたベッドに転がり込んで、どんな内容を書こうかスマホに向き合う。
取り留めもない事が、画面に羅列された字を目にしただけで鮮明に思い起こされるのだ。感動さえ覚える。
文字だけでは無い。
匂いもそう、味もそう、風景もそう、音楽もそう。
記憶は思いもよらないものを頼りにして、驚くようなタイミングで私に会いに来てくれる。
それはいつでも颯爽と鮮やかに、優しく寄り添ってくれる。
▼突然の君の訪問
8/29/2023, 12:51:03 AM