語り部シルヴァ

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『届いて.....』

一定のリズムで刻む心電図。
静かな病室に響く...
清潔感のある病室はどこを見ても真っ白で
自分の吐く息ですら汚しそうになって息が詰まる。

今日で何日目だかもう忘れた。
君は今日も起きる気配は無い...
けどいつか目覚めてくれると信じている。

ふと見た窓の向こうは暑そうで
家の屋根も植物も走る車たちもみんな
太陽の光を眩しく反射している。
ずっと心地良い温度が一定になっている
この病室とは大違いだろう。

「なあ、あの暑い中食べるアイスが好きって言ってただろ。
さっさと起きてアイス食べに行こうよ。」
手をそっと握っても反応は無い。

いつもそうだ。
僕の思いは君に届かない。
「君のことくらいは届いてよ...」

心電図は一定の音を病室に響かせる...
それ以外は時が止まったように静かだ。

語り部シルヴァ

7/9/2025, 10:53:04 AM