恋人と別れた。わたしのこと、本気で好きじゃなかったんでしょ、というナイフとともに、あっけなく終わりを迎えたのが昨日のこと。
彼女を愛おしいと思っていた。大切だとも。けれど、この想いはどうやら彼女には伝わっていなかったらしい。翌日はさぞや最低な気分の朝を迎えるだろうと思っていたのだけれど、目覚めは殊の外快適で、心は不気味なほどに凪いでいた。
――本気で好きじゃなかったんでしょ。
……そう、なんだろうか。
そうではないはずだ。確かに大切にしていた。けれども。揺れる様子のない心の水面に、一縷の不安を感じていた。これが偽物の恋だというのなら。あの安らぎは、ぬくもりは。一体何だったというのだろう。
本当に、ぼくは君を愛していた。これが本気の恋でないというのなら。
きっと、ぼくに恋はできない。
テーマ「本気の恋」
9/12/2024, 11:15:19 AM