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 揺れる羽根


人も疎らになった放課後。雑用を終え、寮へ戻ろうと渡り廊下を歩いていた時だった。
ふと中庭に顔を向けると、ベンチに腰かけた××が目に入った。気づけば、足がそちらへ向かっていた。
どうして足が向いたのか、自分でもわからない。

近づくと、××は一枚の白い羽根を持っていて、それをぼんやりと眺めている。

「それ、どうされたんですか?」

声をかけると××が顔を上げる。
一瞬、きょとんとした表情を見せた後、ああ、と羽根をくるりと回しそれを見せた。

「これか?実験で使った余りなんだ。捨てていいって言われたんだが、なんだか捨てられなくて」

よく見る困ったような顔で笑い、また視線を羽根に戻す。その顔は柔らかいものなのに、どこか掴みきれない。

「気に入ったんですか?」
「いや。でも綺麗だろ?」
「そうですね。とても状態が良いように見えます」
「そう。だから捨てられない」

そう言って手持ち無沙汰に指先で弄ぶ。なんてこと無いただの仕草のはずなのに、なぜか目が離せなかった。

不意に風が吹いて、羽根が揺れる。
××は顔をあげると、何を思ったのか持っていた羽根を空へと放った。それは風に乗って高く舞い上がる。

“捨てられない”そう話していたのにあっけなく手を離す。その無造作な冷たさに、胸の奥が静かに沸き立つのを感じた。
××は羽根が空を舞う様子を見て、ふっと笑った。
それは無邪気にも見えたし、残酷にも見えた。

「じゃあ、そろそろ帰ろうかな。お前も早く帰るんだぞ」

そう言って××は立ち上がり背を向ける。
そこに未練など何もない。

風がまた吹いて、××の背中の裾が揺れる。
その動きに、さっきの羽根が重なって見えた。

10/26/2025, 8:52:16 AM