saku

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時代や性別や人種が全然違っても
体の周りにぼんやり銀色の膜みたいなもがあり、内側から発光してるみたいな人がいる。

今までに2回だけ見たことがある。
1人は多分、男の赤ちゃん。
もう1人は、おばあさん。
白い肌、白い髪。薄い色の瞳。
混雑した地下鉄の席に座ってた。
前に立った時目が合った。
すごく懐かしい感じがした。
声。

迫害されたこともあったのよ、昔はね。
今は何をされてるんですか?
何もしてないわ。ただ生きてるの。
生き通すのが今回のお役目。
誰もがそうなんだけどね。
あなたもよ。
私も?
そう。ただここにいるだけでいいの。
それだけでOKなのよ。
何かに成らなければ自分には価値がないとか、決して思わないで。
私たちは今、この瞬間ここにいる。
真実はこれだけ。
それは奇跡でもなんでもない、ごく自然なことよね。
それなのに難しく考える人ばかりでねえ。だからこうしてただ座ってるの。
あなたにも難しい?
ただここに居ること。

「えっ…」
思わず声に出したその時、扉が開いた。
私は人波に流され、ホームに押し出された。
振り返ってその人を探す。
動き始めた車両の窓に、白い髪と白い横顔がちらっと見えた。
伝えなきゃ。伝えたい。
私…ここにいます。
確かに今、ここにいます。











10/3/2023, 9:03:59 AM