受話器片手に、空いた方の手にペンを握る。手元に一冊のノートを広げ、受話器越しに聞き取った音声を言葉にしてそこに記す。赤、青、黒の三色を駆使して紙に滑らせ、つらつら綴る文字列や図形。時に見えない相手に相槌を打ち、確かにその瞬間は話の内容を理解できたつもりでいた。
通話を終え、不意に視線を落として手元のノートを読み返す。いざ、つい先刻の内容をおさらいしようと試みたときに気付くのだ。自分の書いた文面のお粗末さに。解読困難な文面を紐解く頃には終業時刻を迎えていた。
あー、もう明日でいいや。
明日、出勤早々から始まる己のメモの暗号解読。今から憂うつである。
7/19/2024, 12:50:40 PM