「俺より先に死ぬなよ」
「なんだよいきなり」
「思ったこと言っただけだよ」
「あー?ますますわかんねえし」
「いーんだよそのまんま受け取ってくれりゃ」
「はあ…」
今思えばあの会話、フラグだったんだな、
と、他人事のように思う。
件の会話をした、この世で一番大切だった人間は、自分をかばって、自分の目の前で死んだ。
悲しいはずなのに、涙一つ出ない。
ぐちゃぐちゃにかき回されて狂いそうな頭は、ただただ虚無に押さえつけられていて。
(嘘だ)
屍から一歩後ずさったとき、突然視界と思考がシャットダウンされた。
次に目覚めた時には、あの、死んだ男の記憶は一切無くなっていた。
【突然の別れ】
5/19/2024, 11:17:56 AM