—光芒の絆—
「ずらかるぞ」
兄が言った。
戸締りを確認してから、家を出る。
俺たちは盗みが上手くなってきた。自己紹介で特技として言えるくらいだろう。
確実に、手際が良くなっている。
黒の軽に乗り込む。
「今回も楽勝だな」
兄がハンドルを握りながら得意げに言う。
「さすがに死体が転がってたのは、びっくりしたけどね」
今回忍び込んだ民家は、高齢者の一人暮らしだった。他に誰もいないせいで、亡くなったことにも気づかないのだろう。
「データ通りだったわけだ」
「まあね。そんなことより、もっと飛ばせないのか」
「あぁ、わかってるよ」
一ヶ月前、両親が失踪した。
理由はわからない。だが、直前に両親の様子がおかしいことには気づいていた。
きっと何か怪しいことをしていたんだ——。
取り残された俺たち兄弟は、自分たちだけで生きるしかなくなった。
そうして、俺たちは盗みを始めた。
「きっとあいつ腹空かせてるだろうな」
「そうだな。何かおいしいもん食わせてやんないと」
そんな絶望的な状況の中、どうして俺たち兄弟は必死に生きようとするのか。
「ただいま」と二人で家の中に声をかける。
「お兄ちゃんたち遅い!」
長女のハナが叫んだ。ぷんぷん怒っている。
彼女はまだ小学生になったばかりだ。
「ごめんごめん。買い物行ってたら遅くなっちゃった」
「はい、いちごキャンディ」
妹がパッと明るくなる。
「宿題はしたのか?」俺は訊いてみる。
「キャンディ食べたらするもん」
高三の兄、中三の俺。
俺たち二人が、ちゃんと働けるようになるまで金を稼がなくちゃならない。
大切な妹を立派な大人に育てる。
たった一つの希望を胸に抱いて——。
お題:たった1つの希望
3/3/2026, 1:07:39 AM