未知亜

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ㅤ近道しようとして行きとは違う陸橋を通ったら、ギリギリのところで登りきれなかった。残量ゼロパーセントを示す電動自転車の液晶画面を睨む。なんで夜のうちに充電しておかなかったんだろう。このところの私は注意力散漫だ。
ㅤ重くなった車体をなんとか押し上げ、急勾配を登りきる。てっぺんについて息をつくと、腕とふくらはぎが微かに痙攣するのを感じた。
ㅤ影絵みたいな鳥が視界の端を飛んでいく。陽を受けた雲がキラキラと七色に輝いて見える。
——彩雲だね。
ㅤあなたの声がふと重なった。
——空気が澄んでるとき見えるんだって。
ㅤ翳りはじめた世界の中で、見上げたそこだけが目映い。
——いい事あるよ、多分。
ㅤ明日筋肉痛すごいだろうなと思いながら、ペダルに足をかける。登ってきたのと同じ傾斜のある下り坂へ、私は勢いよく漕ぎ出した。

『七色』

3/27/2025, 7:41:02 AM