創作 「流れ星に願いを」
「じゃーん。手作りのお菓子だよ、食べて食べて」
小さなクーラーボックスからカップ入りのゼリーを取り出して文芸部の友人たちの前に置く。甘いもの好きな二人は目を輝かせた。
「うわぁ、きらきらしてる、うまそう!」
「本当きれいなゼリー。幻想的だね」
寒天で作った紺色の星空ゼリー。カップの底から紺色と透明の二層になっており、少し傾けると、中に仕込んだ金粉がきらきら流れ星のように光る。そして、うえにミントの葉をのせた爽やかな一品だ。友人がそっとスプーンで掬って口へ運ぶ。
「ひんやりしてぷるぷる。中にはブルーベリージャムが入ってるんだね。おいしい、これ」
「そうなの。ジャムも手作りしたんだよ」
二人とも夢中でゼリーを食べ、あっという間に平らげたのだった。わたしは嬉しくてニコニコしながらカップとスプーンを回収した。
友人たちには内緒だが、このゼリーはわたしの好きな本の文章から感じた味を再現したものなのだ。流れ星がモチーフの甘酸っぱくて、爽やかな味の本だった。
「ゼリーおいしかったぁ、あたし頑張ってみる」
「よっしゃ、俺も書くぞー」
休憩した二人は元気が出たようでわたしは安心した。今度は友人たちが作った文芸作品も再現してみようか。そんなことを考えながら、わたしは部室をあとにしたのだった。
(終)
4/25/2024, 1:50:59 PM