〔本当に良いの?これ、プレゼントって。〕
私は、綺麗に包まれた可愛らしい雑貨のプレゼントに、
戸惑っていた。
「勿論!私がプレゼントしたくなっただけだし、
一緒に、デパートに来たって記念みたいな?」
彼女はそう言うと、嬉しそうに笑って
私が手に持っている雑貨に、掌を重ねてくれた。
「折角一緒に来られたんだし、たまにはお礼させてよ。
何時も、お世話になりっぱなしだしさ、私。」
私の目を見ながらハッキリと言ってくれた。
私は、
〔本当にありがとう、ずっと大切にする。〕
と、渡されたプレゼントを見て笑って言った。
元はと云えば、私が彼女に借りた傘を返しに行った。
だけだったのだけれど。
予定を聞かれて、暇だと答えたら、私が前々からずっと
行ってみたかった雑貨、小物店に連れてきてくれた。
そこで見つけた、キラキラとしたイルカのキーホルダーを買うか悩んでいると、彼女がサッとそのキーホルダーを
レジに持っていって、戻ってきた彼女の手には、
綺麗に包まれたキーホルダーがあり、渡してくれた。
その時に彼女は、何時もの、お礼だと言ってくれていた。
彼女は、時々学校をサボっていたり、
先生に叱られそうになったりすると、走って校庭迄逃げたり。
兎に角、とても楽しい人柄であり、憎めない性格をしている。
私と正反対の明るい彼女との接点は、彼女が勉強を休み時間にもしている所を見て、問題が解けなくて悩んでいるようだったから、私が迷惑かな?と思いながら話しかけて、一緒に問題を解く様になった事が始まりである。
毎日、彼女と休み時間を過ごす様になり、その人柄に
段々と堕ちて行った。
そんな時に、傘を忘れた私に、傘を貸してくれた彼女に、私は、言葉に出せない想いに気が付いた。
「どうかした?体調悪いの、ご飯辞める?」
私が想いに浸っていると、彼女は心配そうに顔を覗き込みながら、そう言った。
〔ううん、大丈夫。そうだね、何処に行こっか?〕
慌てて顔を上げて、返事をする。
「無理しないでね。何か食べたい物ある?」
優しく、目線を合わせて微笑みながら彼女は聞いてきた。
〔私は、此処にあるパスタのお店に行ってみたいな。〕
少しドキドキしながら答えると、彼女は頷きながら
「分かった。じゃあ、一階の美味しい所にしよっか。
すっごく美味しいんだよ!時々サボって来ちゃうくらいにはね。〕
その言葉に思わず笑ってしまう。彼女も笑っている。
私の手を優しく引いて、歩き出した彼女に。
今この、まだ言葉が必要なあなたとの関係。
いつか、言葉が要らない程に、想い逢いたい。
8/29/2023, 11:17:35 AM