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【真昼の夢】
 
 かげろうが立っている
 暑すぎて蝉の声さえ聞こえない
 汗が流れていくのを気に止めず
 その行列を凝視している
 
 黒い服を着た男女
 幼い子から老人までバラバラだ
 皆やや下を向き表情までは見えない
 
 先頭の年老いた女が額縁を抱えている
 見なくてもわかる
 あれはあの女の遺影
 
 殺したいほど憎んでいたが
 自分で手を下すことは叶わす
 こうして葬列を見送っている
 
 わかってる、これは白昼夢
 現実ではない
 けれど魅入られたようにその行列から目が離せない
 ああ、汗が目にしみる
 


 
 

7/16/2025, 2:52:11 PM