ミヤ

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"手のひらの宇宙"

宇宙ガラスというものがある。
小さな硝子玉の中に、螺旋状に輝く銀河とぽっかり浮かぶ極小の惑星が詰め込まれた芸術作品だ。
偶然入った展示会で見つけた瞬間、貴女は魅入られたようにガラスケースの前に立ち尽くし、随分と長い間その場を離れなかった。
普段は殆ど美術品に興味を示さなかった貴女が、あそこまで一つの作品に惹きつけられたのは、後にも先にあれだけだ。
出口近くで展示品の販売も行われていたが、値札を一瞥した貴女は力無く首を振る。
小さくとも"宇宙"を所有するには、それ相応の対価が必要だったのだ。

一年後、貴女の誕生日に小さな箱を渡した。
中を見た貴女は、瞳を輝かせて、いつまでもいつまでも手のひらの宇宙に魅入っていた。

1/18/2025, 12:03:10 PM