霜月 朔(創作)

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静かな夜。
消えそうなほどに、
細い細い三日月が、
孤独な私を、
そっと見下ろしてる。

窓辺に立つ私の影は、
酷く朧げで、
心は、月の光に溶けそうになる。
君が私の元を去ってから、
この身も心も、見える景色も、
全てが褪せているんだ。

記憶の糸を手繰り寄せるけど、
温もりは、何処にもなくて。
指先に残るのは、
冷たい痛みばかり。

月明かりに照らされて、
懐かしい歌を口遊む。
独りきりの私の声は、
暗い夜の底に沈んでいく。

嘗て、君の隣で、
口遊んでいた旋律も、
今は、ただ虚ろな響きとなって、
胸の奥で朽ちていくだけ。

夜が明けないで欲しいと、
密かに願う。
永遠にこの闇の中で、
あの日の余韻に、
身を委ねていたいから。

静かに、歌が終わる。
瞳を閉じて、
想い出の中の君に、
優しく微笑み掛ける。

でも、この歌は、
今はもう、私だけのもの。
私の歌声に、
微笑んでくれた君は、
もう…居ないから。

それでも、私は。
独りで、歌い続けるんだろう。
それが罰であろうと、
救いであろうと。

5/25/2025, 8:53:19 AM