半袖
『そりゃ綾瀬はるかが着れば何でも似合うだろうよ』
某CMを見るたびに思う。
タンクトップで外に出かけて様になるのは人を選ぶ。
誰も彼もが海外勢のように堂々とタンクトップでは歩けまい。
綾瀬はるかが可愛いとかかっこいいとかそう言うのは置いといて、あれは選ばれし者が着るから外出着として成立する。私が着たら下着で歩き回る痴女にしか見えまいよ。
手元にあるカップ付きタンクトップを風呂上がりに着て鏡の前に立てばどうあがいても綾瀬はるかにはならない代物が出来上がった。
自虐ではない。事実でしかない。
乾いた笑いになってしまったが、問題はそこにはない。
この殺人級の酷暑では間違いなくタンクトップが大正解だろう。とてもじゃないが外を歩く気候ではない。
回らない頭をフル回転させて出した結論はメッシュ生地の半袖を上から羽織る事だった。
これならば綾瀬はるかにならない一般人でもタンクトップでかつ半袖を着るように偽装も出来る。なかなかの逸品ではなかろうか。
鏡の前でタンクトップを合わせるように目の前で広げる様はまるで通販の司会のようだった。
とりあえずこれを着て外出する。最大限の酷暑を乗り切る為の一つの妙案だった。
白のタンクトップの上から水色のメッシュ地は非常に爽やかに映る。完璧では…?鏡の前にはドヤ顔でガッツポーズを取る自分の姿があった。
それから数日後のこと。
鏡の前では白のタンクトップをきた自分の姿が鏡に映る。数日前と違うのはこんがりと小麦色に焼けた肌に編み目模様が付いている姿だった。
『思ってたんとちゃう…』
情けない顔で呟く姿があったとか、なかったとか。
7/25/2025, 1:05:49 PM