夕方の公園。いつもは友だちと遊んで楽しいお気に入りの場所なのに、今日はとてもつまらない。
理由ははっきりしている。
兄ちゃんと、喧嘩してしまったからだ。
だって、僕が楽しみに取っておいた大事なお菓子。
それを兄ちゃんてば、偶然見つけてそのままほとんど食べちゃったんだもん!
帰ったら食べようと楽しみにしていたのに。
もう、あんまりだよ!
どうしても。どうしても許せなくて。
平謝りの兄ちゃんを押しのけて、最後に「馬鹿!」と怒鳴って家を飛び出した。
あの時は、残しておいたクッキーを食べられたのが残念で、悲しくて。
込み上げる勢いのまま、泣いてどかんと怒ってしまった。
けれども今は、兄ちゃんと喧嘩してしまった――そのことの方が、とっても悲しい。
兄ちゃんは情けないくらいにおろおろして、必死に謝ってくれていたのに。
そんな兄ちゃんを、意地になって困らせた。
どうしよう。喧嘩なんて、したくなかったのに。
どうしよう!
すぐには家に帰りづらくて、足が向くまま、さっきまで遊んでいた公園まで戻って来た。
とぼとぼと歩いて。大好きなブランコに乗ってみたけれど、そんなことで気持ちが晴れる訳がない。
帰らなきゃ、謝らなきゃ。
キコキコ、ゆらゆら。
ブランコを揺らして考え込んだところで、まったく踏ん切りがつきやしない。
どうしよう。どうしよう!
「ああ、居た! 」
そんな僕の悩みを吹き飛ばすように、公園の入り口から大声がした。
兄ちゃんだ。
僕を見付けてドタバタ走り、「兄ちゃんが悪かった。ごめん!」と叫んでいる。
その姿は、お世辞にも格好良いなんて言えやしない。
「――何で」
兄ちゃんは、最初から謝ってくれていた。
しっかり話も聞かずに飛び出した、僕だって悪いのに。
いつまでも怒ってるのは、男らしくないよね。
――うん。迷うのは、もうお仕舞いだ!
ブランコから飛び降りて、一目散に走り出す。
「兄ちゃん。兄ちゃん! 僕も、ごめん!」
ダッシュの勢いそのままに、広げてくれた兄ちゃんの胸へと飛び込んだ。
時々抜けてて、それでも優しくて。
潔くて格好良い。
ごめんね兄ちゃん。
やっぱり、大好きだよ!
(2026/02/01 title:089 ブランコ)
2/1/2026, 11:09:06 AM