『流れ星に願いを』
ドリーは屋根裏部屋の小窓から空を見上げていた。
「はあ、学校なんてなくなっちゃえばいいのに。」
今日も学校でガキ大将のラダンにいじめられたドリーは、真っ赤に腫れた頬を撫でながら、ため息をついた。
7月の夜空は満天の星でどこまでも美しかった。
ベガ、デネブ、アルタイル。これらの星はその中でもとりわけ燦々と輝いていた。
「どうしてこんなに綺麗な空の下で、僕は惨めなんだろうか。」
傷んだ床板に涙が落ちた。
ドリーはいつもラダンにいじめられていたが、決して泣くような少年ではなかった。それでもこの日だけは、世界の美しさを前に、自分の境遇を嘆かずにはいられなかった。
「もし神様がいるなら、この綺麗な星々を僕に見せるなんて残酷なことをしないでくれよ。」
ドリーがそう呟くと、ひとつの星が空を駆けた。流れ星だ。
そして次々と星が流れていった。
ベガ、デネブ、アルタイル。
あんなに煌々と輝いていた星も他の星たちと落ちていく。
やがて、空から星はなくなってしまった。
真っ暗な空を見上げてドリーはますます泣き出してしまった。
「何も全部持っていってしまわなくてもいいじゃないか。ほんの少し、僕と一緒に夜を越してくれる星がいてくれてもいいだろうに。」
4/25/2024, 11:12:23 AM