僕の背には生まれながらに白く大きな羽根がはえている。
けれどそれだけだ。
僕は生まれてから一度だってあの広い空へ飛び出したことがない。
僕の羽根は生まれながらに動かない。
つまりこの羽根はただの飾りだ。
飛べない翼に何の意味があるのだろう。
ずっとそう思っていたけれど。
ある日出会った小さな子供が言った。
「すごいね。こんな綺麗な羽根見たことない。また見に来てもいい? お兄ちゃんの羽根を見ていると、僕、すごく安心するんだ」
ある日出会った彼女が言った。
「あなたが飛んで行かないで、ずっとここに居てくれたから、私はあなたと出会えたの」
──ここに居てくれて、ありがとう。
そうか。
そうだったのか。
僕は僕のままでいいんだと、いつの間にか僕は飛べない翼を嘆くことをやめていた。
【飛べない翼】
11/12/2023, 5:09:23 AM