川柳えむ

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「あれはソフトクリーム」
「あれは鳥に見える」
「あれは……わたがし!」

 暇を持て余した二人は、原っぱに寝転びながら空に浮かぶ雲を指差して、いろいろな物の名前をあげていた。
 あの雲は何に見える? それに見える。いや、あれに見える。

「わたがしって、ほぼそのまんまじゃん。さっきから食べ物ばっかだし。お腹空いてるの?」

 そう言って一人が笑う。
 笑われた方は顔を赤くしながら反論する。

「そんなことないって! たまたま、たまたまそう見えただけだもん!」
「じゃあ、あれは?」
「あれは――」

 指の先にある雲。独特な形をしていて、はっきりと「何」と頭に浮かぶ物はない。

「えぇっと、あれは――」少し悩んで名をあげる。

「ヴリトラ」
「ヴリトラ? 何それ」

 訝しげにこちらを見る。
 そう聞かれても。
 適当に頭に浮かんだ名前を呼んでみただけだ。慌てて言い訳をする。

「なんか、そういう、ほら、神様? みたいな。あの辺が顔であの辺が――」
「えー? 何それ。適当に言ってるでしょ」
「いやまぁそうなんだけど」

 でもその雲を見つめていると、なんだかだんだん、本当にそうなんじゃないかという気がしてくる。
 二人顔を見合わせた。

「きっと神様が私達を見守っててくれてるんじゃない?」
「あーもしかしてそうなのかもねー」

 適当な返事と共に、再び空を見上げる。
 青い空と白い雲、そして照りつける太陽。今日もまた暑くなりそうな予感がする。
 もうそろそろ起きあがろうか。
 大変なこともいっぱいあるけれど、神様が見守ってくれてるといいなぁ。なんて思いながら。


『空を見上げて心に浮かんだこと』

7/17/2023, 1:03:23 AM