野田

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空気は澄みわたり夜空に浮かぶ星達がいっそうに輝きを灯す季節

商店街のあちらこちらを飾るクリスマスツリーには、色とりどりに輝く宝石のような光りが、普段は少し寂しく感じるような街並みを、楽しげな雰囲気へと変える

そんな楽しげな景色の中、肌を突き刺すような風に少し後悔していた

昨夜、「明日は冷えるから玄関に手袋とカイロを出しておいたよ」と祖父が用意してくれていたのにも関わらず、朝の微睡みの中では布団のぬくもりが私を縛り付け、気付いた時には慌てて家を飛び出し、せっかくのまごころも忘れてしまっていた

昼は大学の講義中にもうとうととするほどに暖かかった為すっかり失念していたが、バイトを終え、買い物に商店街へ寄り道をしたこの時間には、布団の誘惑に負けた自分を悔やむ結果となってしまった


建物の間を走り去る冷たい風は、一刻も早く家に帰り暖かいこたつをと思いを急がせるのだが、あまりの寒さに目の前にある古ぼけた喫茶店に暖を求めて入った

店内に入ると、まるで昭和で時が止まっているようだが、年老いた店主のみが現代である事を証明するようにカウンターの中に佇んでいた

自分以外に客はおらず、なんとなくカウンター席に腰を落ちつけコーヒーを注文した

暖かな店内でサイフォンの中を浮き上がるコーヒーをゆったりと眺めていると、先ほどまで縛り付けられていた身体がだんだんとほぐれていくような心地よさを感じる

芳ばしいコーヒーを楽しみ、店内にかかるジャズのBGMに心を委ね一時の安らぎを堪能していると
「今日は帰りが遅いですが大丈夫ですか?」と祖父からのメールが入った

祖父は72歳にしてスマートフォンを父と一緒に覚えはじめ、以前では電話をしてきたが、最近ではなにかとメールを送ってくるようになり、飼い猫の写真や散歩中に見つけた季節の写真や動画なども送れるほどに使いこなしているようだ



今日はそんな祖父の誕生日、私の用意したプレゼントを喜んでくれるだろうか





12/23/2023, 12:26:37 PM