「わざわざ見に行きたいとは思わないけど」
そう言いおいて彼はコーヒーを一口飲んだ。
「寒いしさ、正月は特に人混みが凄いでしょ?」
だから別に行かなくてもいいよ。
確かにその通りだと思いながら、私もコーヒーを飲む。
「TV見てれば中継で色んなところの初日の出とか見れるしね」
コタツから出るのが億劫な私は、彼の言葉に相槌を打ちながら皿に乗ったチョコチップクッキーに手を伸ばす。二人ともインドア派で、デートもお互いの家でゲームしたり漫画読んだり。それでいいしそれが心地よかった。特に会話を交わさなくても、お互いのことはよく分かっていた。――だから。
「……」
頬杖をついて、ぼんやり全国の初日の出のリレー中継を見る彼の横顔が。その瞳が、僅かに潤んでいたことに。私は思いがけず、ときめいてしまったのだった。
END
「日の出」
1/3/2024, 12:07:13 PM