愛情
『ねぇ、エドガー。愛とはどんなものかしら』
斜め下から見上げてくるその美しい瞳には信頼と期待に満ちたキラキラとした美しい色を宿したものだった。
私はその期待に応えられるかな?
わざとおちゃらけた風を装ってみたものの、目の前の少女の瞳からの輝きはすこしも曇らない。
『愛、かい?随分と難しい謎かけだね、レディ。』
いつもの唐突な問いかけにもこちらは慣れたものだ。
にこりと笑いかけてふと考える。
愛、愛か。
そう言われてみると具体的な愛というものを考えたことがない。
男にとって愛というものはあまりにも身近にありすぎて空気の様に存在感のないもので、目の前の純粋な少女が望む様なものとは到底思えないどろりとしたものに満ちたものだった。
愛という美しい器はパンドラの箱だ。
輝きに満たされた器の中には人のあらゆる欲が満ちている。煌めきに満ちた世界を夢見られるほど、男は穏やかな生き方を知らなかった。
『そうだね、教えてあげても良いけれど』
目の前の艶やかな小さな手の甲に軽くキスをしてウインクを一つ。少女のキョトンとした顔に苦笑ともつかない穏やかな気持ちを覚える。この綺麗な子供に自分の知る薄暗いものを教えたくなかった。
『そうだね、君はどう思う?』
少しだけ、ズルい大人は答えをはぐらかしながら質問を返す。純粋に、目の前の少女の答えが気になったのもあるけれど。
………
休憩☕️
11/28/2024, 9:10:00 AM