No.30:記録
忘れられない様に、どんなに正確に綴っても
必ず綻びが生まれて、間違った情報が伝わっていく
書かれた文面をなぞりながら、私はひしひしとそれを感じていた。
彼はこんなに謙遜者じゃなくて、もっと自信家だったし
苦い珈琲より、甘いココアが好きだった。
ここはあってる、ここもあってる。
でもここが違う。ここも、ここも違う。
私の知ってる自信家で、甘いもの好きな勇者じゃなくて、優しくて、しっかりした、力強い勇者しかいなかった
本物の彼は、もう私の中にしかいないんだね
少し優越感を感じると思っていたのに
綺麗な勇者像を指摘して、違うよなんて笑ってやるつもりだったのに
私はいつの間にか、頬を濡らしていた
2/26/2025, 11:38:20 AM