惰眠

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大空

どこまでも続く蒼穹を、飛んでみたい。あおいろで視界いっぱいにしながら、雲をかきわけて君に逢いにいく。

高いところから飛べば、青空に手が届くと思ったんだ。
白いドレスを纏えば、背中に翼が生えて、天使になれると思ったんだ。そうしたら君が迎えてくれると思ったんだ。

君がいない世界なんて考えられない。生きていけるわけがない。きっとわたしは、手遅れなところまできていた。

***

――痛い。痛くて、熱い。全身から空気が抜け切って、呼吸することさえできなくなってしまった。
わたしって馬鹿だな。空なんて飛べるはずないのにな。

目の前がぐわんぐわんと揺れて、しだいに白に染まっていく。 遠くでサイレンが鳴っているけれど、フェードアウトみたいに聞こえなくなっていく。これが完全に聞こえなくなったら、死ぬんだろうなって思った。

でも怖くないよ。もう少しで君に会えるはずなんだ。
このひとときの苦しみを耐え忍べば、今度こそ昇っていけるはずなんだ。わたしはそっと瞳をとじて、どこまでも続くあの大空を頭にうつしだした。走馬灯のかわりに。

***

目を覚まして最初に視界に飛び込んできたのは、真っ白な何かだった。やがて視界が鮮明になり、それが天井だと分かる。
――どうやら失敗してしまったらしい。

開け放たれた窓から、風が冬の空気を運んでくる。それがわたしの頬をくすぐるように撫でると、跡形もなく消えてしまう。
鳥の鳴き声、だれかの話し声、笑い声。それに混じって、ほんの少しだけ聞こえたその声が、とても懐かしかった。

12/21/2023, 6:34:37 PM