駄作製造機

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【スーパーヒーロー】

ある日朝起きたら、"あー、今日学校に行きたくない"って思った。

本当に、突然のことだった。

今まで普通に学校行って、勉強もなぁなぁで、授業中はたびたび居眠りして、部活して。

他の人たちに比べたら、全然頑張ってない日常。

なのに。

僕は今日学校を休んだ。

1日休んだら次の日、そのまた次の日。

どんどん伸びていく僕の連休。

いつも畳んで整頓していた布団も、ここ1週間は敷きっぱなし。

起床時間は陽の光を浴びてない影響でみんな仕事や学校に行った後になり、ほとんど動かずじっとしているから就寝時間は余裕で日を越した。

暗闇の中に浮かび上がる液晶の光。

僕は夜が好きになった。

誰にも邪魔されない1人の時間。

みんなの寝息や寝返りを打つ音が静かな家の中では大きなBGMになる。

今起きているのは僕だけ。

世界が静かになったみたいで、昼より断然落ち着く。

夜が本当に大好きだ。

朝ぼんやりと目を覚ますと、みんな起きててバタバタしてる。

寝ぼけているけど、耳は鮮明になっている。

『今日も悠人休みなの?』

『しょうがないじゃない。もう言わないで。ただでさえストレスいっぱいなんだから。』

『いいなぁ、、』

『1日何もせず家でゴロゴロして、、ブタになるよ?』

『あ、もうなってるか。』

『私の育て方が悪いの?!』

聞きたくなくて耳を塞いだ。

毛布にくるまった。次第に体が震えた。

学校休むのって、大罪なんだ。悪いことなんだ。

風邪とか病気じゃない限り、休めない。

『だめ、、休んじゃダメ、、』

頭の中で永遠に反芻するダメという言葉。

じゃあ、もう、、

『死ぬしかない。』

休み始めて2週間。

僕の目に初めて宿ったやる気だった。

みんな家から出て行った。

1番手頃な死に方は飛び降りか首吊りらしい。

僕は飛び降りるために空きビルを検索した。

目深までフードを被った僕はただ死だけを目標に家から出た。

鍵なんてかけてない。

かけても意味ない。

『どうせ、終わりなんだ。』

僕に残された道はこれしかない。

これ以外にない。

今日で死ねなかったら明日も明後日もこの先もずっと光のない日々だ。

日の本には出られない日々だ。

『はぁっ、はぁっ、、』

着いた。空きビルは当然の如く人っ子1人おらず、錆びた外階段が放置年数を物語っていた。

カン、カンと鉄製の階段を登るたびに足音が響く。

いよいよだ。僕は死ぬんだ。死ぬしかないんだ。

『はっ、はっ、はっ、はっ、はっ』

呼吸がみるみる浅くなる。

死にたくない。それはかき消されて、頭の中には死ななきゃいけない。という気持ちが洪水のように流れる。

空きビルから見下ろした街並みから、昔のことが走馬灯のように流れてきた。

"僕は街の平和を守るスーパーヒーローだ!"

"誰かを守るヒーローになりたい!!"

"ヒーローはカッコいいんだ!空をヒューンって飛んで、ドカーンって!"

今思えば、ヒーローになりたいだなんていかにも幼稚園児らしい子供じみた夢だと思う。

でも、あの頃の方が僕は幸せだった。

『飛べるかな。』

そうだ。スーパーヒーローになって空を飛ぼう。

足を一歩、踏み出した。

飛んでる。

空中でスーパーマンが飛ぶように右拳を突き出す。

飛びたかった。











ぐしゃ

11/11/2024, 10:56:07 AM