#08 空模様
「こりゃ大雨だな」
夏の日差しがジリジリと肌を焼く午後2時。
心地よい風の吹く中、公園を散歩をしていたら
ベンチに座っていたおじいさんが言った。
何を言っているの?
雲ひとつない青空が一面に広がっていて
太陽がこれでもかというほど大地を熱しているのに。
「お嬢ちゃん、傘を持っていないのなら急いで帰りなさい」
え、私?
確かに傘は持っていないが、
急に話しかけられたことに驚きを隠せなかった。
「わかりました、でもどうして?」
不思議に思ったのでおじいさんに聞いた。
「空と会話をしてるんだ、ほら風が吹いているだろう?」
え、空?会話?
よく分からなかったがなぜか納得した。
そんな会話を交わしたあと、買い物をしてから
家に帰る途中。
午後3時
次第に空は厚い雲で覆われて灰色に染まり、
やがて陽の光は届かなくなっていった。
気が付くと先の天気が嘘みたいに
大雨へと変わっていた。
「雨だ」
全身濡れながらもなんとか家に着いた。
「風……」
_____
「今日はいい天気だね」
親友のあゆみとのお出かけ。
夏の日差しがギラギラとふたりを照らす午後3時
風がとても心地よかった。
風がとても……心地いい……。
「ねぇ、今から映画館行かない?」
「珍しいね、いいよ行こう」
特に観たい映画もなかったし、
何が上映されているのか分からなかったがとりあえず映画館に着いてチケットを購入した。
すると、
天気は急変し大雨になっていった。
ほんとに降ってきた。
「知子みて、雨降ってきた。
タイミングよすぎじゃない?どうして?」
「空と会話したんだ」
しぐれ
8/19/2024, 11:50:24 PM