22時17分

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星のかけら。

世にも珍しい、星のかけらを運搬するワイバーンに興味があった。
背に乗りたい。
星のかけらに紛れて、どこへ行こうとするのか知りたいと考えた。

星のかけらを運ぶのだから、きっと図体は大きいだろう。人ひとり乗せたところでバレっこない。
そういう想像をして、星のかけらの集まる通称「星屑の砂浜」で待ち伏せをした。

半月ほど、じっとしていた。
砂の色と海の色、どちらも夕刻になって太陽の光で飴色になるくらいまで、じっとしていた。
その龍は夜空が広がる方角よりやって来た。
太古の昔より集まる星屑の砂浜に、身体ごと突入させた。タカのように滑空して、地に接するとすぐにモグラになった。
砂糖の山に一匙掬い取るような豪快さ。
誰かの意思で一匙の気分であるワイバーンは、そのまま持ち上げられ、大量の星のかけらを背に抱き、また夜空に羽ばたく。

到着地はきっと新たな星だ。
鷹揚とした背に乗った、星のかけらに溶け込んだ小さな彼は、離島が浮遊するときの重力加速度を感じつつ、不安定さの揺り籠に耐えていた。
飛翔時間中、細やかに星のかけらは落とされていく。宇宙に散らばる星々、そうか、これが夜空が美しい理由なのだ。
ワイバーンによってふるい落とされ、最終的に乗せられた大きな星のかけらを使って、新たな星を作り出しているんだ……。
しかし、興味のあった者にとって、その期待感ほどのものではなかったと到着してから思った。

確かに星を作っていた。
しかし、それはまだ夜空で瞬くような星の形をしておらず、ゴツゴツとした岩の大地が広がっているだけだった。

「うわっ」

突然、ワイバーンは空中で宙返りをした。
それで背に乗る大きな星のかけらとともに、新たな大地に降り立った。
大きな星のかけらは、落とされた衝撃で砂になった。
少年は無事だった。
星砂の砂浜がクッションとなって、高所からの衝撃を緩和したのだ。

ワイバーンは宙返りをした後、飛んでいった。
流れ星みたいに見えて、始まりの神が目にしたものと同質だと魅了された。

1/10/2025, 9:35:48 AM