幻覚

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『神様へ』

最初に感じたのは喪失感だった。

ずっと傍にあった物が無くなってしまったような。次いで全身の痛みを認識した。軋む身体に鞭打って目を開く。ふさ、と温もりが寄り添ってきて、相棒が隣に居ることを知った。擦り寄せられた頭を撫でてやろうとして、腕ひとつ上げるにも随分苦労した。流石は排撃貝と言ったところか。戦いの行方はどうなったろうか。奇妙なまでに静かな空に、不安を掻き立てられた。どうしてこんなにも、と考えて、神の存在が感じられないが故だと気付く。あの人程の心綱を持たずとも、あの強大な気配は国の何処に居ても感じられるものだった。

神はもう行ってしまったのか。空を見上げても、青く澄んだ空には月の影はなかった。

4/14/2024, 2:21:50 PM