お気に入りの赤い靴をはいて、リサちゃんはお母さんと一緒に手芸屋さんに入った。毛糸売り場のコーナーに行くと、お母さんは真っ先にお買い得品のワゴンを見に行く。
「リサ、これはどう?」
振り向いたお母さんの手には、10玉入りの黄色の毛糸のパック。
「やだ、リサはあかがいい。」
ワゴンの中をくまなく探すも、赤い糸はない。
「ピンクならいいんじゃない?」
「だめ。」
すぐそばにある棚に駆け寄ったリサちゃんは、真っ赤な毛糸を一玉取り出す。
「これがいいよ。」
リサちゃんの所にゆっくりと歩いてきたお母さんは、値札をまじまじと見つめる。
「10玉で3850円か。」
そう言うと、お母さんは毛糸を一つ手に取って丹念に触り始めた。無言のまま、赤い糸を見つめるお母さん。
「ねえねえおかあさん。リサ、やっぱりきいろもすきだよ。」
リサちゃんが持っていた赤い糸を棚にしまおうとすると、
「やっぱり、これにしよう。リサ、かご取ってきて。」
リサちゃんは急いでかごを持ってきてお母さんに渡すと、二人で赤い毛糸を一つずつ数えながらかごに入れていく。
「10。」
最後の1個をかごに入れると、リサちゃんはお母さんに抱きついた。
「おかあさん、ありがとう。このセーター、たいせつにきるから。」
「まだ出来てもないのに。」
お母さんはリサちゃんの頭をなでながら、クスッと笑った。
「けいとがあまったら、くーちゃんのセーターもあめる?」
「くーちゃんは寒くないから、セーターはいらないんじゃない?」
「ぬいぐるみだってさむいんだよ。」
「毛糸が余ったらね。」
かごを持ってレジに向かうお母さんの後ろを、スキップしながらリサちゃんはついて行った。
6/30/2024, 12:46:12 PM