「それだけの関係」
あっという間に空が暗くなって、ぽつり、ぽつり数滴の雨が地面を濡らし始めたら、そのまま一気に本降りになった。
傘を開く間も無く、濡れていく。
石の階段は既にびしょ濡れ。
山門に駆け込んだ途端、遠くから雷の音が聞こえ、雨もさらに激しくなった。
とりあえずここで雨宿りさせてもらおう。
一息つき、ふと気配がした方を見ると、今一番会いたくなかった人がそこに居た。
「久しぶりだね。元気だった?」
和かに私に声をかける彼。
あぁ。他人に向ける笑顔だ。
どう応えていいものか一瞬迷い、軽く頷く。
「すごい雨だね。さっきまで、あんなに晴れていたのに」
「そうですね」
彼の方を見ずに応える。
どうして会いたい時に会えなくて、会いたくない時に限って会ってしまうのだろう。
息を吐く。
天気アプリで雨雲レーダーを確認。
三十分もしないうちに雨は止むはずだ。
彼の探るような視線を感じるが、私はそのまま前を見続ける。
私を突き放したのは彼。
今さら、話すことなど無い。
もう他人なのだ。
たまたま雨宿りをした所に居合わせた二人。
今の私たちは、それだけの関係。
だから、これ以上、私を見ないで。
話しかけたりしないで。
────通り雨
9/27/2024, 10:27:38 PM