はた織

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 15年以上前に聞いたのは確かだ。
 高校生だった私。
 スライド式携帯電話の音楽フォルダの中。
 タイトルは『……』。
 少女らしき声が歌詞のない歌を歌っている。
 ピアノもギターもない。
 人の声しか聞こえない。
 らーらんららんらららん……
 その曲を聞いていると、少女の横顔が浮かび上がってくる。彼女は歌に身を任せて自然体でいる。彼女の表情に笑みも涙もないが、夢中に歌う姿に心を惹かれる。
 歌う少女に向かって微風が吹き、柔らかな黒髪から白い額を覗かせた。その白い額は何度見ても白昼の月を思わせる、そう白い残像を目に焼きつけた頃には曲が終わっていた。
 思い出したこの曲をウェブ上で調べたが、詳細を得られなかった。けれども「ラララ」の文字を見て、この曲が私の中でもう一度再生されたのは幸運だ。歌詞なき歌が、15年の時を越えて私の心の中に流れてきたのだから。
                 (250307 ラララ)

3/7/2025, 12:44:17 PM