300字小説
勇者と商人
「『仲間』という言葉で誤魔化さないで下さい。魔王討伐までサポートした料金はキチンと払って頂きます」
勇者である俺のパーティの旅路を支えてくれた商人が手を差し出す。
「結局、金かよ」
俺は奴に金貨の詰まった袋を投げ付けた。
帰還し軍幹部に迎え入れられた俺は調子に乗り過ぎて、王都から追放された。当てもなく歩く俺を迎えたのはあの商人の馬車。新しく造ったという村に行き、畑付きの家を俺にくれた。
「ありがとう。やっぱり仲間だったんだな」
「いいえ、貰い過ぎた金貨の分を返しただけです」
奴が素っ気なく返す。
「でも反省したなら『仲間』として組んでも良いですよ」
勇者ブランドは貴重ですからね。
奴はにっと笑って手を差し出した。
お題「仲間」
12/10/2023, 12:01:13 PM