NoName

Open App

物語には僕1人で十分だ。

この本には冬が閉じ込められている。辺りに積もりまだやもうとしない潔白の雪に隠れるように咲く冬の花たち。空は濁っている。そこに立つ僕はまるで冬に取り残されたよう。実際僕は取り残された。もう春には行けぬだろう。
だがそれでいい。こんなに寒くて冷たくて孤独な場所なら何人いたって同じだ。閉じ込められるのは僕だけでいい。この物語だって僕1人で完結させてやる。そしてこの本を情景描写だけのつまらないものにしてやる。


お前もこれがつまらない話になるまで待つといい。

12/18/2022, 4:03:45 PM