いろ

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【プレゼント】

 高層ビルに囲まれた狭い空を見上げる。灰色の曇天から、はらはらとこぼれ落ちる白い雪。朝に見た天気予報では、降水確率は0%と言っていたのに。
 手のひらを上へと向ければ、舞い落ちてきた雪のカケラが僕の肌の熱に触れてすぐに水滴へと変わる。ああ、なんて美しい光景だろう。
 生まれ育った山奥の村は、冬が始まると雪に覆われるのが当たり前だった。就職のために都心部に出た今年はもう、雪なんて見られないものと思っていたのに。
(――ありがとう)
 ポケットの中の家の鍵につけたお守りを、そっと握り込んだ。物心ついた時から僕と一緒に遊んでくれた、優しい親友。村を離れたくないと年甲斐もなくワンワンと泣いた僕を励まし、これからもずっと見守っているからと祝福を与えてくれた、僕のたった一人の神様。
 きっとこの雪は、神様から僕への誕生日プレゼントだ。懐かしい気配のする粉雪に全身を包まれながら、僕は懐かしさに微笑んだ。

12/23/2023, 11:48:30 PM