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 今まで、心の中では何度もその言葉を言ってみていた。帰り道に二人で少しでも話をしてみたかったのだ。普段話す機会があまりなかったから。

 ある日は、帰る支度をしているのを見て、一緒に立ち上がってみた。思いがけず、ガタガタと大きな音がしてタイミングを逃した。またほかの日には、さりげなく退室して、エレベーターホールのところで待ってみた。今日こそと思っていたら、一向に会わない。どうやら、違うルートで出て行ったらしい。そんな感じでそのタイミングはなかなか訪れなかった。
 
 遅くなったある日、エレベーターを待っていると、扉が開いて君が出てきた。「忘れ物をしたから。あれ、遅いね」。「うん、一緒に駅まで帰らない?」。「いいよ」。忘れ物を取りに行く後ろ姿を見送る。ずっと待ち望んでいた機会なのに、逃げ出したいほどドキドキしていた。

「僕と一緒に」

9/24/2025, 8:57:21 AM