南葉ろく

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 此処には居場所がない。いつだってそんなことを考えている。
 楽しそうな笑い声。賑やかな喧騒。それを尻目に今日も私は縮こまるように、定位置のソファで。
 空気であればいい。見えない存在であればいい。そんな風に思うけれど、時折こちらを向いて笑顔を向けられたりするものだから、今日も私の喉は引き攣れ、歪な笑顔を浮かべるのだ。

 彼らは私に無関心でも嫌いなわけでもないのだと、思う。
 卑屈な私が、ただただ一人、そうであるべきなのだと声高々と、叫んでいる。無関心であれ。嫌いであれと。
 無視されたいわけじゃない。嫌われたいわけでも。
 矛盾を抱えた心はグルグル、今日も私を蝕んでいく。

 どこにいたって、私の居場所はいつでもキリトリ線の外なのだ。私がそう決めた。だから。
 今日も部屋の片隅で、ぼうっと何もない場所を、見つめている。




テーマ「部屋の片隅で」

12/7/2024, 2:48:57 PM