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時を止めて

「貴方はいつまでも褪せることがないね。」
穢れを知らない真白なワンピースから惜しげもなく晒されるすっと長い手足。可憐で不適な笑みを浮かべる君に僕は淡い想いを抱く。
年季の入った椅子に腰かけ、日々に思いを馳せた。
いつまでそうしていたのだろう。穏やかな日差しを右頬に感じて体を起こす。その暖かさに少しの憂いをもって窓へと視線をやった。綺麗な夕焼け空。
「綺麗だ。あの日もこんな晴天だったよね。」
「帰りがけ君が引いてくれた手を思い出したよ。」
「…」
「そっちでも楽しくやっているのかな」
窓に映った自分と目が合った。あの頃よりも伸びた背。あの頃よりも低くなった声。あの頃よりも増えた皺。
君の清廉なそのワンピースも、可愛くて大好きな笑みもなにもかも変わらないのに、僕だけがどんどん変わっていってしまう。僕だけが時を重ねてしまう。
貴方の記憶はいつか褪せてしまうのだろうか。
君が進んでくれないのなら僕だって進みたくなかった。

11/6/2025, 12:28:42 PM