ナクラ

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何も無い荒野を歩き続ける。
不思議と喉は乾かないし、腹も減らない。
ただただ、何も無い荒野を歩き続けている。


祈りの果て


ある日世界は崩壊した。まるで小説のような話だが、他の星の生命体が地球を滅ぼしたらしい。らしい、と言うのも、壊れかけのラジオからの情報だからで、自分ではその様子をついぞ見たことがなかったからだ。


あの日の放課後、自分は教室でうたた寝をしていたはずなのだ。轟音で目が覚めて、当たりを見渡すと一面の荒野。自分の目をあんなに疑ったのは初めてだった。
それから、近くに古いラジオが置いてあることに気がついた。聞こえてくるのは砂嵐の音だけだ。それでも何か役に立つかもしれないと考え、手に取った。

それから、ずっとこの荒野を歩き続けている。




それから、ずっとこの荒野を歩き続けていた。
とうとうオンボロラジオが壊れた。とはいえ、あの日以来放送なんて一度も掛かっていなかったが。
ラジオを荒野に置いていき、また歩き始める。


それから、ずっとこの荒野を歩き続けていた。
民家を見つけた。第一村人は居なかったが。
パンと水を少し拝借して食べた。不思議と味はしなかった。我に返りこの家の住民への謝罪の為に1週間ほど滞在したが、自分以外がドアを開けることは無かった。


それから、ずっと、ずっと歩き続けていた。
不思議と疲れは無いし、喉も乾かないし、腹も空かない。だけど、歩き続けるやる気が出ず、私は荒野に座り込んだ。
いつまで歩けばいいんだ。どこまでゆけばいいんだ。
そもそもここはどこだ。どうやったら帰れるんだ。
家に帰してください、と胸の中で祈ってみる。
案の定、何も起きなかった。
私はゆっくりと立ち上がり、また歩き始めた。

それから、ずっと、この荒野を、歩き続けている。

11/14/2025, 5:25:54 AM