手を取り合って
6月の花嫁が新郎と共に司祭の前にまかりこし
祝福を受けて集まってくれた新郎新婦を祝う人々を前に誓います。
「その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しきときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
司祭は新郎新婦の手を重ね合わせ問います。
「アーメン」
「アーメン」
新郎新婦は手を取り合って、そう応えました。
ハレルヤ
ハレルヤ
美しい夫婦が誕生しました。
この出会いは神様が授けてくれた赤い糸に違いない、私は祝福されたのだ。
この人を逃したら、きっと後悔しかしない、真心込めてそう高らかに告げる新郎なのでありました
・・・・ つづく
終わりにしよう
「終わりにしよう」
あの「誓いますか」「誓います」の日から何夜を共にしたでしょう?数ヶ月?数週間?数日…。
彼は彼女にそう告げました。
「病んでる間も、悲しんでる間もなかったわ。
言えば、今が病めるときで、悲しみのときかしら、富めるときも、貧しきときもなかったは、だって二人で築いたものなんて何もないから、それこそ、これが間違いであったと言う証かしら…」花嫁はそう呟いて、誓いを立てた司祭の告解室で涙ながらに訴えました。
「やはり、そうでしたか。」
黙って新婦の告解を聞いていた司祭は思わずそう言いました。
そうして、こう続けます。
「良い勉強をなされました。
これこそが神からの祝福です」
「これからを誓い合う場で、これこそが誓いと思い込む浅はかさ、言った先から誓いが崩れる安っぽさ、そんなに簡単に本物は見つからないし本物にするための誓は生まれながらに本物ではなく、細石の結晶が岩になるような雨と日照りと寒い雪とを越えてなるものであり、そのために誓はあるからです」
「この、神の形示しを、どう取るかがあなたへの祝福です」
「神は、いつもここであなたのことを見守っていますよ」
「神様は、見物がお好きなのね!」
彼女はスカートの裾を翻し告解室を後にした。
「終わりにしよう」
それから巡るひと季節
「病めるときも、健やかなるときも…
誓いますか?」
「アーメン」
「アーメン」
彼女はまた誓うのでした。
「神様は見物がお好き」
2024年7月14.15日
心幸
7/15/2024, 11:19:07 AM