炎天下、アスファルトから更に熱がのぼっていく。
下から下からと四角い棒付きバニラアイスは溶けていくが、君の舌は簡単には負けない。暑さと重力に抵抗し、追いついてみせる。
そんな君を歩きながら横目に見ていたから、自分のアイスキャンディーはぼとっと音を立てて地面へと溶けていった。
「落ちてんじゃん」
「うん」
お世辞にも上品とは言えない笑い声が空へのぼっていく。
少し高い段差の上を歩く君が太陽と重なって、
「もう一本食べる?」
と悪戯っぽい笑顔がぼやけた。
「買わなきゃ」
「奢るよ」
「いいの?」
「そのかわり君は私の買ってね」
奢るって意味が夏に消えかけてまた笑いが弾けた時、この瞬間を誇らしげに思うのだ。
こんなに煌めいた夏は二度とこないかもしれないと。
8/16/2022, 12:44:50 PM