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「実は誰にも言えない秘密があるんだけどね、」

君になら話しても大丈夫かなって。もちろん他の人には内緒だよ?
そう言って頬を赤く染めて話す彼女は、まさに恋する乙女そのものでとても可愛らしい。なんせ、これまで誰にも言えなかったという秘めた想いを打ち明けてくれているのだから。
想い人を思い浮かべながら、ようやく自分の想いを口に出すことができた彼女の笑顔は、これまでにないほど輝いていて、それでいて蕩けるような様相をしていた。
心の中をひっくり返されたのかと思った。


秘密の共有を許された歓喜。
初めて見る彼女の表情への驚愕。
その想いと表情を向けられた誰かへの嫉妬。
甘く苦しい締め付けられるような彼女への恋情。


「実は誰にも言えない秘密があるんだけどね、」

そうやっていつの日か、彼女と同じように自身のこの感情を誰かへ、はたまた彼女自身へ打ち明ける時が来るんだろうか。
ひとつわかるのは、今はまだ、到底言えそうにないということだけ。正真正銘、誰にも言えない秘密のまま。

そうして今日も、何食わぬ顔で彼女の秘密を受け入れる。


『誰にも言えない秘密』

6/6/2024, 4:29:16 AM