かたいなか

Open App

前回投稿分からの続き物。
最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、
そのうち末っ子の子狐は、ようやく稲荷狐のひよっことして認められ、名前を授かったばかり。
近々、具体的には次の春から、新しい就業場所に出される予定となっています。

ところでこの稲荷子狐、
まさかのロボットの友達がおりまして。
それは「ここ」ではない、別の世界のチートな技術で、某円形自動掃除ロボットと空気清浄機とを合体した魔改造ロボット。
子狐からはその駆動音から、「うぃんうぃんさん」と呼ばれていました。

ただ自動掃除ロボットと空気清浄機をドッキングしただけの機械です。
機械なので、心があるハズ、ないのです。それを出力・表示する機能が無いのです。
なのにまったく不思議なもので、うぃんうぃんさんは子狐の稲荷神社に向かってうぃんうぃん。
移動してきたのでした。

「うぃんうぃんさん!うぃんうぃんさん!」
コンコン子狐がその日の真夜中、稲荷神社の庭で落ち葉ダイビングと洒落込んでおったところ、
うぃんうぃんさんが、数キロ程度の道を移動して、子狐に接近してきました。

「うぃんうぃんさん、あのね」
子狐はとても寂しそうに言いました。
というのも子狐、稲荷狐の修行のために、次の春から半年間うぃんうぃんさんと会えないのです。
うぃんうぃんさんも勿論ですが、
うぃんうぃんさんよりもっと長い間一緒に遊んで、一緒におやつを食べて、一緒にお昼寝した人外の友達ともまた、同様に会えなくなるのです。
「あのね、あのね」

うぃーん、うぃんうぃん。
子狐が泣きそうになったそのとき、うぃんうぃんさんに装着されたアームの駆動音がしました。
アームはライトブラウンの紙袋を上手に掴んで、
それを、子狐の目の前に、静かに置きました。

そうですお題回収です。
うぃんうぃんさんは子狐に、贈り物を持ってきて、
その贈り物の中身が子狐の大好きな、おでん屋台のお肉系とお揚げ系の詰め合わせだったのです。

「うぃんうぃんさん!」
子狐はビタンビタン!狐尻尾を高速回転。
うぃんうぃんさんが贈り物の中身を、紙袋から出して子狐に見せてくれたことに、大感激です。
「うぃんうぃんさんも、いっしょに、食べよ!」
うぃんうぃんさんは機械ですが、妙なことに、こういう気が利くこともできるのです。

ところで機械っておでん食べられるんですかね。

「おいしい。おいしい」
子狐はうぃんうぃんさんからの贈り物を、幸福に、それはそれは幸福に堪能しました。

うぃんうぃんさんは機械なので、特に感情的な反応はしませんでしたが、
うぃんうぃん、うぃんうぃん、
子狐が食べこぼしたお肉の欠片だのお揚げさんの欠片だのを、アームで上手に拾っては、
これまた上手に、紙袋の中に入れておったとさ。

贈り物の中身がおでんだったおはなしでした。
おしまい、おしまい。

12/3/2025, 4:26:36 AM