hot eyes

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夏。学校が終わって、がら空きの電車内で椅子に座る真人(まひと)と陽太(ひなた)。
「今日すっごい暑かったよねー」
「うん...」
「暑すぎて体育とか死ぬかと思った~」
「ん......」
「......真人眠い?」
陽太が聞くと「ん......」と静かに返事が来た。
「そっか」
「...ん...」
ん、しか言わなくなった彼は、もうほとんど目が開いていなかった。珍しいな、と陽太はぼんやり考える。
(疲れてたのかな)
なんて事を思っていると、左側に少しだけ圧がかかる。陽太は目だけ動かすと真人が眠っているのが確認できた。
(真人が寝てる......一つ前くらいで起こそうかな)
陽太は向かいの窓の向こう側を眺めて思っていた。



『_____......まもなく終点です』
陽太は、ぱちっと目を開ける。


まずい、やってしまった!


陽太は真人を起こすはずが、自分も一緒に寝てしまったのだった。
「ま、真人起きて!終点!」
「んー…...は゛?終点?」
真人をゆさゆさと揺すり起こす。眠い目を擦り、『終点』という言葉で覚醒し始めた。
「え゛?陽太も寝てたのか」
「ほんとーーーに、ごめーーん」
ぱんっ、と両手を合わせる。はぁ、と溜め息をつく。
「仕方ない。俺だって寝てたからな」
「申し訳なーーい」
数分後、電車が停止して真人と陽太は駅へと降りた。

「次の出発はー......一時間半後か」
「一時間半!!?」

おーまいがー!と陽太は空を仰ぐ。
「歩いて帰ってたらそれ以上かかるし、待つか」
「おーまじかー!!その前に俺達溶けちゃうよぉー!」
「静かにしろ、余計暑くなる」
陽太は頭を抱えて地面に叫ぶ。すると真人は何かを見つけたようだ。

「......お、陽太」
「何真人!」

「このあつーい待ち時間を打破する物があるぞ」

その発言に陽太は顔を上げる。ぴっ、と指差した先には『氷』と書かれた旗が揺れていた。

「.........かき氷っ!!?」
「そ」

暑いし食おう、と真人が言い終わるか終わらないかの内に、陽太はその旗に向かって駆け出していた。
「おまっ...!走るな!!!転ぶぞ!!!」
「真人早く早く!!」
気づいた時には既に陽太は旗の真下に居た。両手を、ぶんぶんと勢いよく振っている。

「はぁ......先頼むなよ!!」

真人は溜め息をつき、駆け足で向かう。

彼の口角は少しだけ上がっていた。


お題 「終点」
出演 陽太 真人

8/11/2024, 8:29:46 AM