創作 「星空の下で」
城の裏手にそびえる丘で、物思いにふける王の傍らに1人の男がひざまづいた。
「おまえはいつ如何なる時も、我が声を聴くことを誓うか?」
厳かな王の声に、彼は恭しく口を開く。
「誓います。私はこの命尽きるまで貴方の声に耳を傾け続け、手足となり続けましょう」
「うむ。ならばおまえに聞く。もし我が国の魔力が底をついた時おまえならばどうする?」
彼はわずかに口ごもり、そして答えた。
「主様のご裁量に従います」
「実におまえらしい答えだ。だが、我は考えた。近づく終わりを憂うよりも、新たな道を探し進むことが、今の我にできることなのではないかと」
明瞭に放たれた言葉に彼は思わず顔を上げた。
「恐れながら、もしや主様は……」
「ああ。北の高原に住まわせた科学者を、我が配下に置こうと思う」
そして王はニッカリと笑いこう続けた。
「我が望みは、科学者も魔法つかいも皆が共に生きられる世をつくることだ。この望みに、おまえはついてきてくれるだろうな」
「もちろんにございます!変化を恐れぬそのお心、私は敬服いたします」
男がそう言うと、王は未だ見ぬ先を見据えるように、夜空へ目を向けた。
「今宵の星は輝いておるな」
つられて男も視線を移す。どこまでも 澄みきった夜空を、いくつもの星が流れているのだった。
(終)
4/5/2024, 12:32:07 PM