あの日、世界が終わった。
私は、また、失った。
思い出の場所、大切な友達、気に入っていた本、この人生での家族。他にもたくさん、失った。
今度で何回目だろうか、と数えることもしなくなった。何度見ても慣れないけれど、泣くことや怒ることが一度もなかったのは、私が人じゃないからなのか、性格の問題か、それとも「そう創られた」からなのか、知る由もなかった。
すべてを見渡すことができるこの場所から、世界が散るのを眺める。
世界の散り方は様々で、毎度違う散り方がみられる。
ある時は花火のように、ある時は水が流れるように、ある時は砂が落ちるように。
この世界は、紙が燃えるように、じりじりと崩れていった。
隣の彼は散りゆく世界をじっ、と見ている。何を考えているんだろうか、などと無粋なことは考えない。
私の周りには、七人の仲間がいる。個性的な奴らだけれど、世界が散るのを見る時は、みんな黙って、ただ見ている。泣くのもいるし、苦しそうなのもいるし、みんな、世界が散ることを良く思っていないのだろう。
そんな中で、一瞬、世界が消える直前の、ほんの、一瞬。綺麗だ、と思ってしまう私が嫌いだ。
こんなに多くのものを失っても、まだ綺麗だなどとぬかす余裕があるのか、お前に人の心はないのか。自分を責めたくなる。私は感情さえも失ってしまったのか。そんなことは、ないだろう?
何度も繰り返す、自問自答にうんざりする。
それでも、
まだ私には残っている。
まだ、すべてを失ったわけではない。
彼らが、仲間が、いるのなら。
私と、いてくれるのなら。
思い出の場所も、友達も、本も、家族も、感情さえも。
他には、もう、何もいらない。
4/21/2024, 2:46:58 AM