美夜

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 『一年間を振り返る』


 「去年の今頃だったね、私に声掛けてくれたの。」
 彼女と年末の買い出しにスーパーに立ち寄って、重い荷物を車に積み込み、帰路につく車中。
 「初めて飲みに誘ってくれて、嬉しかった。」
 彼女の幸せそうに微笑む横顔。俺は見惚れそうになって、慌てて前方へ向いてハンドルを握り直す。
 「あの頃は、緊張してたなぁ。断られるんじゃないかと思って。」
 思い出を懐かしむ。たった一年前のことがやけに遠い出来事のようで。
 「ねぇ、いつから私のこと気に掛けてくれてたの?」
 「え、それは……君が入社してきた頃から?」
 「え、嘘。そんな最初から?」
 「お前は新入社員の中でも一番可愛らしかったから。」
 「え、うそー。」
 「始めは目立たなくて地味な子だなと思ってたけど、控え目で真面目でいい子だなって。」
 「どうせ地味ですけどー。」
 フフッと笑いがこぼれる。
 「でも、付き合ったら全然違ってた。」
 「え、何が?」
 「意外と、積極的だなぁって……」
 「何?何が?なんか変な意味でしょー!」
 ははは、と車内が笑いに包まれる。
 「なぁ、俺のことはどう思ってた?」
 「え、んーと……もっと、大人っぽい人だと思ってた。」
 「思ってた?今は違うの?」
 「違うじゃん!全然子供っぽいじゃん!」
 「えー、俺カッコ良くない?」
 「自分で言う?」
 「お前に惚れられてるって思っただけで、俺自信ついたし。」
 「……自信過剰ー。」
 「過剰でいいじゃん。そう思わせてくれてるの、嬉しいよ。」
 「……」
 沈黙に目を遣ると、少し頬を染めて微笑む彼女の可愛らしい横顔が見てとれて。
 この一年間育んできた関係を大切に思う。

 俺はこの一年、君に救われてきたよ。

 「一年間、ありがとう。これからもよろしく。」



12/30/2022, 11:49:02 AM