tiny love
桜が舞っている。空は少しどんよりとしていて、灰色がかった色をしている。そんな中、私は初めて中学校の門をくぐる。
ブカブカのブレザーと、長いスカートはいつこのサイズに合うようになるのか....なんて、少し困ってしまう。身体に合わない制服を少し恥ずかしく思うけど、周りのみんなも同じようにブカブカの制服で、羞恥心が少し和らぐ。
案内に従って教室を目指す。
古い校舎に足を踏み入れると、ギシ、ギシと、足音とともに軋む音が響く。配管が剥き出しの壁はヒビが入っていて、校舎がとても古いものだと物語っている。南海トラフが起きたら真っ先に潰れてしまいそうだと恐怖を感じながらも、最上階の1番奥の教室を目指す。
たどり着いた廊下も、歴史を感じる壁に囲まれ、人がまばらに集まっている。教室の入口付近に男の子たちが集まっていて、入りにくさを感じながらも足を動かす。
男の子の集団の中に、猫背な男の子を見つけた。
私は胸がキュッと締まるのを感じた。
周りより少し背の高い男の子は、背が丸くなっていて、横から見てもわかる、丸いほっぺたをしていた。ニコニコと笑う姿は向日葵も恥じらうほどに眩しかった。
私はその横顔に、笑顔に、懐かしさを感じる。
幼稚園で仲良かった男の子だった。特に仲良しな男の子。そう思っていた。
あのころと同じように跳ねる鼓動を感じて、妙に納得してしまった。
私は彼に、小さく淡い恋心を抱いていたことに気づいてしまった。この気持ちが、大きく、そして醜くなることを知る由もない私は、この気持ちとこの瞬間を、優しくくるんで胸の中に置いてしまった。
10/29/2025, 2:30:47 PM