もあ

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バカみたい

「瑞希!聞いてる?」
「…あぁごめんちょっとボーッとしてた」
「珍しいね。瑞希も悩み事?」
「ううんだいじょ…あ〜いやちょっとあるかも」
「どっちよ笑まぁでもいつでも話してくれていいからね!この私がびしっと解決してあげよう」
「なんだそれ笑」
…その悩み事が自分のことだなんて思ってないんだろな
「そういえばさ〜また彼氏が…ごめん話して大丈夫そ?」
「結局私が聞く側なんかい!まぁいいけど笑」
「えへへ…あんがと。それでね!」
…………………………
……この顔が嫌い。
愚痴を言ってきてるはずなのにどこか楽しそうで
私と話してるはずなのに真菜の目には私が映っていないようで
真菜の1番になれてるのに真菜のこと大事に出来ない彼氏が憎らしくて
1番を取られて嫉妬してる醜い自分がよく見えるようで

「……なの!どう思う!?」
「ぁ…それは酷いと思うな〜」
「だよねぇ!やっぱり瑞希なら分かってくれると思った」
「うん…」
「えもうこんな時間!?この後彼氏の家行くんだった!」
そう言ってドタバタと荷物をまとめ始めた。
胸がえぐられるような感覚に襲われる。
「よし、じゃあね!またあした〜」
「ん、またね」
真菜がいなくなったひとりぼっちの教室はあっという間に静寂に包まれた。
もうここにいる理由もないから荷物をまとめ始める。
少し重い鞄を背負って玄関まで行くと空は灰色に濁っていた。今の心情そのものだった。
そういえば今日は降水確率が80%くらいあったような
途中で雨に降られないことを願いつつ帰路に着いた。

―ポツ
頬に雫が当たった。
家まではまだ距離がある。
「最悪……」
それから何滴か落ちてきたかと思えば、案の定土砂降りになってしまった。
仕方ないので近くにあった公園の屋根が付いたベンチに駆け込んだ。
スマホを取り出して、親に公園で雨宿りをしてるとだけメッセージを送り電源を切る。



「そういえばここ、真菜とよく遊んでたっけな」
小さなつぶやきは絶えず降り注ぐ雨の音に吸い込まれた
全部覚えてる。滑り台は敵の監視をする見張り台だったしブランコは私達をどこまでも連れてってくれる乗り物だったし、木の上は私達だけの隠れ家だった。
毎日飽きもせず遊びに来たし、お菓子を持ち出してこっそり食べたりもした。

屋根を打つ雨音が強くなる。

春に桜が綺麗でひらひらと落ちる花弁をつかもうとして顔からずっこけたこともある。
夏には―――
手のひらに雫が落ちる
風は吹いてない。雨漏りもあるわけない。
「戻りたいな……」
絞り出した声は震えてて、今にも消えてしまいそうで
…いっそ消えてしまえたら、なんて


「…………………バカみたい…」

3/22/2024, 12:44:34 PM