アリア

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青々と生い茂る木を自宅のベランダから
頬杖をつきながら見下ろす。
道路を挟んですぐ前にある公園では四季折々の木々が楽しめた。
春には桜、夏にはサルスベリ
秋には紅葉やイチョウ、冬には椿。
旅行をせずとも四季が楽しめちゃうこの場所を
存外私は気に入っている。

夏の暑さから一転し空気は肌寒くなり
そろそろ衣替えをする時期に差し掛かっていた。
周りを見てもちらほらと長袖を着ている人達が目に入る。ちょっと前まではみな半袖だったのに早いものである。
そしてあっという間に冬になり1年が終わるのだろう。


それはそうと、と意識を再び木に向けるも青い葉は変わらぬ姿を見せていて落胆する。
紅葉は湿度が適切でないと赤い葉を見せてくれないらしい。よく川辺に咲いてるものも見かけるだろうが、そこは適度に保たれているからあんなにも美しく真っ赤に染まるんだろう。


あぁ早くこの木も赤くなってくれないかな
そうすれば私のこの沈んだ気持ちを持ち上げてくれるだろうに。


ふと目の前をアキアカネが飛んでいく。
その事に目を瞬きさせるとフッと笑みがこぼれた。


「秋の訪れはそっちが先だったかぁ」


まるでこれからだよとでも言うかのように去っていったので肩の力が抜け心がフワッと軽くなる。



秋の訪れ
それは些細なところから


お題【秋の訪れ】

10/1/2025, 5:06:42 PM